- 「今年こそは、ちゃんと生きよう」×20?
- 【前熟考期】「やる気がない」のではなく「怖くて触れられない」段階
- 見ないふりをしないと心が壊れてしまうから、頑なにならざるを得ない
- 【前熟考期へのアプローチ】心を動かすのは「強制」ではなく「安全基地とリソース」
- 【熟考期〜準備期】「私もやれるかもしれない」と灯がともる瞬間
- 【維持期】継続の鍵は「定期的なチェックイン」と「逆戻りの許容」
- おまけ:母の「動いてみようスイッチ」が入った瞬間
- ただ選択肢とリソースを置いてくれた人たちへ
- 参考文献・引用元
「今年こそは、ちゃんと生きよう」×20?
そう思って、毎年何冊の素敵で、そして高価な手帳を買い直してきただろう。
結果はいつも同じ。
最初の数ページだけが埋まり、あとは真っ白なままクローゼットへ消えていく。
私にはADHDがあり、昔から「時間盲(時間の感覚が掴めない状態)」を抱えていました。
スケジュール管理、タスク管理、時間管理。
世間の人がこなしているらしいそれらのことが、人生でただの一度も成功したことがなかったのです。

【前熟考期】「やる気がない」のではなく「怖くて触れられない」段階
心理学の「変化への備えモデル」では、行動を変えようとしない初期の段階を「前熟考期(今後6か月以内に行動を起こす意思はない段階)」と呼びます 。
よく教科書には「本人が問題そのものを認識していない段階」と書かれているのですが 、当事者としての実感はなんとなく違う気がして……。
問題が見えていないのではないのです。むしろ、痛いほど見えている。
手帳を開くたびに、自分の「できない現実」を突きつけられる。
それは私にとって、解決可能な問題などではなく、もう自分の手に負えない巨大で恐ろしい「何か」でした。触れてはいけない、危うい領域だったのです。

見ないふりをしないと心が壊れてしまうから、頑なにならざるを得ない
単に「やる気がない」のではなく、「怖くて触れられない」。
周りから「片づけなさい」「時間を守りなさい」と言われると、私はいつも心を閉ざしてしまっていました。
なんて言えば良いのか…文字通りの「フリーズ」。怖い。動けない。
でもそれは、単に「やる気がない」のではない。
見ないふりをしないと心が壊れてしまうから、頑なにならざるを得なかったのです。
怖くて触れられないからこそ、防衛本能で必死にシャッターを閉めていただけでした。
教科書でいう「前熟考期」とは、ただ愚痴を言って現状を拒否しているだけの時期に見えるかもしれません 。
けれど、実はその裏で、本人が一番困っていて、責められる恐怖と戦っているケースもあるのだと、私は身をもって知っています。

【前熟考期へのアプローチ】心を動かすのは「強制」ではなく「安全基地とリソース」
では、この頑なな「前熟考期」にいる人に対して、周囲はどう関わればいいのでしょうか。
モデルでは「変化しない場合のリスクとメリットを伝える」などとありますが 、何より大切なのは「本人の境界線を侵さない安全基地」になることです。
そんな、前熟考期と熟考期を何年も何年も暗く行き来していた私に、最初の「安全基地」をくれたのは夫でした 。
まず、「何も期待してないよ。そのままでいいよ」と言ってくれたのです。
「変わらなくてもいい」という究極の安心感(逃げ道)をもらったことで、私の防衛本能はふっと消えました。
そして夫は、私が一番苦手だった料理を完全に肩代わりしてくれました。
口先だけでなく、私が他のことに取り組めるように「時間というリソース」を実際に作って提供してくれたのです 。
私の片付けに対するこだわり(私の境界線)はそのまま100%尊重し、自由にやらせてくれた。
その結果、私はあんなに片付けが苦手だったにもかかわらず、自発的に「ライフオーガナイザー」の資格を取るまでに変わることができました。

【熟考期〜準備期】「私もやれるかもしれない」と灯がともる瞬間
次のステップは、変化への関心が高まる「熟考期(今後6か月以内に意思がある段階)」、そして行動の計画を立てる「準備期(今後1か月以内に行動するつもりがある段階)」です 。
お片づけは進んだけど、心のどこかにずっと引っかかっていた「時間盲」と「時間&タスク管理」の問題。
こればかりは、ずっと見ないふりを続けていました。
けれど、安心できる環境にいたからこそ、時間管理の情報が自然と目に留まる(熟考期)ようにはなっていたのです。
そんなある日、小鳥遊(たかなし)さんのタスク管理オンラインイベントが、パッと目に入りました。
いつもなら怯えてスルーしていたはずなのに、その時はなぜか「参加してみよう」と思えた。
そして、お話を聞きながら、私の心の中で初めて「私もやれるかもしれない」という小さな、でも確かな灯がともりました。(準備期への移行)
怖くて触れられなかった「巨大な何か」の正体が、ほんの少し、味方に変わった瞬間でした。
【維持期】継続の鍵は「定期的なチェックイン」と「逆戻りの許容」
実際に行動を起こす「実行期」を経て、一番の難所となるのが、変化を定着させる「維持期」です 。
モデルの解説によると、維持期を安定させるためには【定期的なチェックイン】や【社会的サポート】、そして【後退(逆戻り)にも前向きに対処する姿勢】が不可欠とされています 。
その後、イベントでご一緒した嵯峨さんに、嵯峨さんお手製の「Task Walk」というアプリを使わせていただく機会をいただきました。
1人では不安だったので、週に1回、伴走とコンサルティングをしてもらうことになりました。
最初は、やっぱりうまく書けませんでした。
けれど、「今週も嵯峨さんに会うからには、少しだけでもアプリに触っておこう」という緩やかな社会的サポートが、私を支えてくれました 。
何より救われたのは、私が記入できなくても全く責めず、嵯峨さんが言ってくれたこの言葉です。
「中断しても、またそこから再開すればいいんですよ」
「変化への備えモデル」の維持期には、『後退(逆戻り)にも前向きに対処する』という大切なルールがあります 。
さがさんの言葉は、まさにそれでした。
「完璧にできなくていい。戻ってもいい」と思えたら、嘘みたいに気が楽になり、逆にアプリを開くことが続くようになったのです。
週に1回、「一週間を整える会」という定期的なチェックインの場があること 。
そこで温かいフィードバックをもらえること 。
この仕組みがあるからこそ、私は今、魔法が解けることなく「維持期」にいられています 。
かつてあんなに恐ろしかった時間管理が、今では完全に自発的にアプリを使い、時間を可視化し、スケジュールを組むという、私になくてはならない大切なツールになっています。

おまけ:母の「動いてみようスイッチ」が入った瞬間
実は、我が家にはもうひとつ、この「前熟考期」にある人の心を動かしたエピソードがあります。
父が亡くなってから、実家をずっと片づけられずにいた私の母の話です。
私たち姉妹(娘)がいくら「片づけよう」と言っても、母は「もうその話はしないで!」と拒絶してしまいました。
まさに心を閉ざし、周囲の支援に「抵抗」している前熟考期の状態です 。
そんな母のスイッチを入れたのも、私の夫でした。
夫は、母が「これなら手放してもいい」と言っていた、特にこだわりのなかった古いピアノに着目しました。
そして、一番めんどくさくてパワーのいる「業者を調べて、訪問査定の予約を入れる」という大がかりな部分――モデルでいう『関わる能力(実行機能の課題)』の部分を、代わりに一気にやってくれたのです 。
本人の「自分で決めたいこだわり(境界線)」には一切踏み込まず、単純に「めんどくさくて、人にやってもらえたら助かる部分」だけをそっと肩代わりする。
そうして目の前にパッと具体的な進捗が見えたことで 、母の心のハードル(実行機能の課題)が一気に下がり、そこから急に自発的に片づけてくれるようになりました 。
どこにこだわりや不安があるかよく聞いて 、本人にとって重要でないところから進めていく。
これもまた、相手を「矯正」しようとしない、前熟考期へのひとつの優しいサポートの形でした。

ただ選択肢とリソースを置いてくれた人たちへ
もしあの時、誰かが私を無理やり「矯正」しようとしていたら、私は今も頑なに心を閉ざし、真っ白な手帳を買い続けていたと思います。
私が自分でもびっくりするほど変われたのは、周りの人が私を「変えようとしなかった」から。
夫が、小鳥遊さんが、嵯峨さんが。
誰も私をコントロールしようとせず、ただ私の境界線を守り、選択肢とリソースだけを、そっと私の前に置いておいてくれたから。
「進んでもいいし、戻ってもいいよ」
そんな優しい安全基地をくれたすべての人に、心からの感謝を込めて。
参考文献・引用元
講座名:変化への備え 基礎編(INT-310)
主催:Institute for Challenging Disorganization®(ICD®)
講座開発・講師:Wendy Hanes, CPO®, CPO-CD® / Angela Esnouf(Hoarding Home Solutions)
主な理論ベース:ジェームズ・プロチャスカ、ジョン・ノークロス、カルロ・ディクレメンテ著『Changing For Good』(行動変容の6段階モデル)
デイビッド・F・トリン、ランディ・O・フロスト、ゲイル・ステケティ著『Buried in Treasures』(強迫的獲得・ため込みへの支援)