家は味方

ADHD親子の、片付けられる家。

魔法の賞味期限が切れたあと。 40歳からの「人生の調律」

 

「日の出貝」の時代と、グリンダの健気な魔法

かつて、私たちの世界は淡いピンク色の「日の出貝」のように輝いていました。

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ミュージカル『ウィキッド』の初期のグリンダのように、若くて、華やかで、誰からも愛される「人気者(Popular)」であることに全力を注ぐ時期。

それは、生物としての本能であり、社会からの期待に応えようとする乙女たちの、健気で一生懸命な「頑張り」でもあります。

先日訪れた香港で、周囲の道を塞いでいることにも気づかず自撮りに没頭する若い女性たちを見かけました。

彼女たちは決して悪気があるわけではなく、ただ「美しく見られる」という過酷な戦場で、必死に生き残ろうとしている。

その姿は、かつての私自身のようでもあり、少しだけ切なく、愛おしくも感じたのです。

「賞味期限」と、ゴツゴツとした牡蠣の殻

けれど、魔法にはいつか賞味期限が訪れます。

40代を目前に、若さという通貨が通用しなくなる現実。

アン・モロウ・リンドバーグが『海からの贈り物』で綴ったように、私たちはいつしか「日の出貝」を失い、日常という波に洗われたゴツゴツとした「牡蠣の殻」を背負うようになります。

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家事、育児、仕事、そして「女」としての役割。

剥き出しの心が傷つかないように、私たちは必死にその殻を固め、重たい鎧を纏います。

時にはモノで隙間を埋め、時には目に見えないスピリチュアルな世界に救いを求め、時には「白髪と体格」という壁を作って女性であることを降りようとしたコレットの主人公・レアのように。

それは決して「逃げ」ではなく、壊れそうな自分を守るための、精一杯の防衛反応なのです。

「幸福になろうとする」という罠を抜けて

最近学んだホーディング(ため込み症)の知見によれば、その兆候は10代から始まっており、専門家に出会うのは「数十年遅すぎる」のが現実だといいます。

なぜ、それほどまでに時間がかかってしまうのか。

もしかしたらそれは、私たちが「幸せになろう」と格闘しすぎてしまうからかもしれません。(あくまで一因として)

 

ラス・ハリスは説きます。

「幸福になりたいなら、幸福になろうとしてはいけない」

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「幸せという感情」という移ろいやすい魔法を追いかけるのをやめたとき、私たちは初めて、自分の「価値観」に沿った生き方を選べるようになります。

外側のデコレーションを足し続けるのではなく、内側への信頼を積み重ねていく。

それが、私の考える「人生の調律」です。

 

私が調律し続けたい「5つの弦」

「賞味期限」というオブラートに包まれた残酷な言葉に立ち向かう方法は、外側を塗り固めることではありません。

自分の内なる「価値観」に従って、自分のできることに集中すること。

そして「幸せな気分」をキープしようとするのではなく、悲しみも衰えも「人生の一部」として受け入れながら、自分の内面を調律して美しく響かせる。

そこから生まれる人生の豊かさを味わうことです。

 

私が40代の旅路に持っていこうと考えてみた、5つの調律習慣です。

  1. 全身の保湿: 誰のためでもなく、自分の境界線を慈しむ自愛の儀式。
  2. 美しい姿勢: 社会の重圧の中でも、自分の尊厳を保つ構造。
  3. 謙虚さ: 自分の正しさを一度横に置き、新しい見方を受け入れる余白。
  4. 好奇心: 現実を知った上で、なお世界を「素敵ね」と愛でる瞳。
  5. 傾聴: 相手の物語をジャッジせず、丸ごと受け止める静かな強さ。

8月の誕生日に、魔法の杖を置いて

ライフオーガナイズとは、単にモノを捨てることではなく、心が「心地よい」とささやく場所と時間を取り戻すこと。

8月に迎える40歳。私はグリンダの魔法の杖をそっと置き、自分の指先で、自分の人生の音を奏で始められたらいいなと思います。

その音楽はきっと完璧ではないでしょう。間違いだらけかもしれません。

ただ、内面への信頼を1ミリずつ積み重ねていたい。

そんな「人生の調律」という新しい航海を、私は軽やかに、そして素直に楽しんでいきたいです。

参考文献

  • シドニー=ガブリエル・コレット『シェリ』『シェリの最後』(岩波文庫)
  • アン・モロウ・リンドバーグ『海からの贈り物』(新潮社)
  • スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』(キングベアー出版)
  • ラス・ハリス『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』(筑摩書房)
  • ミュージカル『ウィキッド』
  • Suzanne Chabaud, Ph.D.(ICD主催 "Early Intervention for People with Early Signs of Hoarding Disorder" 講義より)
この記事を書いた人

清水ゆか(ゆかたづけ) 3児の母。自身も長男もADHDの診断を受けている。「苦手なことは克服せず、環境を味方につける」をコンセプトに、同じように片付けに悩む方をサポートするため「米国ICD認定CDスペシャリスト」や「ライフオーガナイザー1級」、「発達障害子育て支援アドバイザー」を取得。日々のカオスを乗り越えるリアルな発信をしています。「一緒に自信を育むオンラインお片付け会」が「JALO SDGs AWARDS 2025」審査員特別賞を受賞。