ヘルシンキを旅するなかで、ふと立ち止まりたくなる室内の景色に、何度も出会いました。
それはどれも、強い主張のない、静かでひかえめな空間。
けれど、そこにある“光”はどこまでも豊かで、心の奥にまでそっと届くようなものでした。
窓辺の机と白い壁
白く塗られた壁、淡い木の床。
そして、窓のすぐそばにそっと置かれた机や棚。
フィンランドの冬は、日照時間がとても短く、太陽が低い角度から差し込みます。
だからこそ、室内に入ってくる光の一筋が、まるで贈り物のように感じられるのだそうです。
白い壁は光をやわらかく受け止めて、部屋の奥へと反射させてくれる。
棚の上の植物や小さなオブジェは、そのひかりを浴びながら、静かにたたずんでいます。
この「明るさ」には、きっと照明ではつくれない質感があります。
「明るすぎない」やさしさ
フィンランドの照明もまた、とても印象的でした。
ほとんどが間接照明で、天井から降り注ぐ強い光は少なめ。
代わりに、ランプシェードや壁に反射するやわらかい光が、部屋全体をそっと包んでいます。
いちばん印象に残ったのは、「光で見せる」ではなく、「光で安心させる」空間のあり方。
どこかおうちの中のようで、街の灯りも、部屋の明かりも、まるで同じ呼吸をしているようでした。
光を使って、こころを整える
この旅で気づいたのは、
「明るい部屋にしたい」と思っていた私の願いの奥には、
「心を整えるような光がほしい」という想いがあったのかもしれない、ということ。
蛍光灯の強い光よりも、
窓から差し込む自然光、壁にふわっと映る明るさ、
そしてその“影”すらも、心地よさをつくってくれる。
光もまた、感覚にやさしく寄り添ってくれるものなんだと知りました。
わたしの暮らしに取り入れてみたいこと
– 午前中はカーテンを開けて、光の動きを感じてみる
– 白や淡い色の壁や布を取り入れて、光を迎える場所をつくる
– 明かりは「足す」よりも「整える」。影も美しさの一部にする
ちいさなことからでも、きっとはじめられる。
このやさしさを、自分の暮らしにも少しずつ、しのばせていきたいなと思っています。
次回予告
次回は、音に寄り添う道具たちについて。
金属音が苦手な方にもやさしい“ロープ巻きハンガー”や、感覚への工夫についてご紹介します。