家は武器

ADHD親子の、片付けられる家。

「捨てる」はゴールではなく手段であることを忘れない

片付けのよくあるお悩み「捨てられない」

ミニマリストさんが増えてきている世の中ですが、実際には「捨てることができない」というお悩みを持つ方が多いようです。

捨てることのメリットは昨今、充分に叫ばれていると思うので、ここではお話しません。

 

今回は、「捨てなければ!」と焦っていたり苦しんでいる方と一緒に、「捨てること」は目的ではなく、手段としての選択肢の一つだという基本を、改めて思い出していきたいと思います。

白い壁の横の緑色のプラスチック製のゴミ箱

 

捨てなければ!と焦る前に、確認したいこと。

それは、「どんなふうに暮らしていきたいか?」という価値観の確認です。

自分はどんな空間で、どんなふうに過ごすことで満たされるのか。

それがはっきりわかっていなければ、正しく削ぎ落とすべきものを見極めらないはずです。

 

例えば、先日のお客様は、料理が大好きなご夫婦でした。

価値観を紐解いていくと、「食」にとてもこだわりがあり、豊かな食生活や、ご家族ご友人と食卓を囲んで過ごす時間を一番大切にしてらっしゃることがわかりました。

 

キッチンを拝見すると、珍しい食材、調味料がぎっしり!

整理すると確かに、使い切れず賞味期限切れになってしまったものもみつかるのですが、だからといって「よく使わないものは無駄!」とは決して言えないケースです。

 

多少使い切れなかったり、無駄になってしまったとしても、珍しいスパイスを使わずには得られない特別な香り、その奥深さを家庭の中で体験できることは、その御夫婦にとってはなくてはならないものです。

 

賞味期限切れや、試してみてお気に召さなかった食材調味料だけを除いて、お気に入りだけをズラッと並べて出来上がった「世界の調味料コーナー」は、とてもお客様らしい

素敵な場所になりました。

 

もしそのご夫婦が、「キッチンをすっきりさせなければ」「たまにしか使わないから」という理由でスパイスを捨ててしまったら、生活の楽しみが大きく損なわれてしまいます。

 

「何が好きなのか、自分でもよくわからない」という方だっている中で、好きなものが明確にあることは素晴らしいことです。

 

好きなもの、こだわりのもの、それを楽しむための空間・時間・モノは、できるだけたくさん持っていたい!

そんな当たり前の気持ちと権利を大切したいものです。

それを「捨てなければ!」という思い込みで失うのは、大変もったいないことです。

 

(一方で、料理ベタな私の場合、特別なスパイスは真っ先に手放す対象となります。

私のような人においては、海外の珍しい料理は外食でのみ楽しむと決めて、定番の調味料しか揃えない、というのが正しい選択になるのだと思います。)

 

捨てるのは、「人生の楽しみ」を際立たせる手段

一方、その方のおうちは、キッチン以外の物量はそれほど多くないようでした。

こだわりのない部分については、潔くたっぷりと手放すことができ、キッチンカウンターの収納棚の中身は、半分ほどなくなりました。

そしてこれまで入れたくても入れられなかった大切なアルバムを良き場所に収納できるようになったのです。

 

好きなものは充分に持ち、特にこだわりのないものは手放す。

こうして持ち方にメリハリを付け、好きなものに充分なスペースを割けるようになる。

これが、「捨てる」という手段が効果的に活かされた例です。

 

捨てることが「目的」になると、本来捨てなくても良かった、捨ててはいけなかったものまで手放してしまう結果になり、「せっかく片付けたのになんだか虚しい、寂しい生活になった」ということにもなりかねません。

 

捨てることの効果を充分に発揮させるためには、自分の価値観をまずははっきりさせて、目的「こうしたい・ありたい・なりたい」に合わせて、削ぎ落とすべきものと残すものを見極めなくてはなりません。

当たり前ですが、忘れてしまいがちなことだと思い書いています。